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名護市市長選挙2018と辺野古沖基地建設の問題・主張 公約

名護市市長選挙(平成30年2月4日投票)の実施で、宜野湾市の普天間基地が名護市の辺野古沖に移設される問題が、世間的にも再び大きくクローズアップされています。

この記事では、『普天間基地の移設』という複雑な問題について、また、現地沖縄の方々の賛成・反対の真意について、できるだけ簡単にまとめています。

普天間基地の移設と米軍基地負担の問題とは

1995年に起きた沖縄米兵少女暴行事件に対して、米軍駐留への大規模な反対運動があり、普天間基地の移設の検討が開始しました。翌1996年には、日米首脳会談(当時、橋本首相とクリントン大統領)で「普天間基地の全面返還を目指す」という合意がなされたものの、詳細な詰めが進まず、局面も二転三転・右往左往したまま、今年で23年の歳月が流れました。そして事態は、国による方向性こそ決まったものの複雑化するばかりの現状です。

結局、『国(日本)』が、名護市辺野古沖への移設(拡張工事)を決定して工事を開始。工事に反対する沖縄県との法定闘争が続き、一時、中断がありましたが、現在は着々と工事が進んでいます。

関係する報道に触れても、沖縄県民の直接の民意が感じられるものが無く、辺野古沖への基地建設反対のデモや政治的な運動が強調されるものばかりで、必ずや野党による与党への攻撃材料にされる問題・・。そのように感じるのは筆者のみでありましょうか。

名護市辺野古沖に移設工事が進む中、なおいっそう、賛成・反対が激しくぶつかり合う現状です。では、ここに至るまでの『普天間基地移設問題』を複雑化させている背景は何か?それは、概ね、以下の問題が絡み合っていると言えましょう。

宜野湾市の「普天間基地」そのものの問題

普天間基地そのものは、その周囲に住宅や学校が密接する宜野湾市の市街地中心部に存在します。問題のきっかけとなった米軍兵士による婦女暴行事件の類は、すでに幾度となく起こっていることです。また、訓練中の大型ヘリが墜落・炎上した事故がありましたが、この事故は今後も起こる可能性があり、地域住民はつのるばかりです。さらに、近接する基地のヘリや飛行機の騒音が、継続する一大問題です。

日本政府と沖縄県との間の溝が深い問題

戦後、沖縄は米国の統治下にあり、住民への発砲が事実上認められている条件の下、「怒れる沖縄住民」の暴動が何度か起きています。

日本国内の『米軍専用の基地』の約7割超が沖縄に集中する現状です。沖縄の日本への返還後も、日米の国際関係を背景に、沖縄の基地負担は継続し、何か問題が発生しても「金で解決される」という印象が強く、沖縄県民の反発を招いてきました。

そうした中、基地反対の県知事・県議会議員を自ら選出したものの、基地反対を現実化するに至らず、沖縄県民に不満は増すばかりです。

決定的であったのは、過去の政権が「普天間基地の『最低でも県外』へ移設」という発言を行ったことです。その時の人気取りだけが目的の無責任な発言でした。どう考えても実現不可能であり、結局実現されることはありませんでした。

このような事柄を背景に、沖縄県民と日本政府との間には、深く根強い「溝」が存在します。

名護市辺野古沖への「基地移設反対意見」のある問題

辺野古沖への基地の移設は、米軍海兵隊のキャンプ・シュワブを拡張する形で実施されます。

基地から市街地への距離は「10km以上」確保、最寄りの住宅地への距離は1.5kmと、基地と住民との距離は、普天間基地に比べて大幅に改善はされます。しかしながら、辺野古地域住民の基地建設への反対意見は存在します。その主なものは以下のとおりです。

  1. ジュゴンやサンゴなど、生態系への影響があるのでは?
  2. 基地の廃油や排水などで環境汚染があるのでは?
  3. 漁業への影響があるのでは?

について、環境省では、ジュゴンは「沖縄周辺の海草を特段の偏り無く摂餌」しているとして、ジュゴンがエサの藻を捕食するところは辺野古に限られるわけではないとしています。

について防衛省では、廃油や汚水は浄化して排水すると回答しています。

の漁業への影響とは、具体的には、ヘリポート建設のための埋め立てで漁場がなくなる、工事中に漁ができなくなる、という影響のことです。これに対しては、国から漁業組合へ36億円の補償金が交付されます。

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名護市辺野古沖の基地建設への反対意見と賛成意見

辺野古の基地建設には反対意見やデモの実施ばかりが報道されるように思えてなりませんが、非公式ながら、以下のような名護市住民による『基地建設賛成』の赤裸々な意見がネットの随所で散見されます。

「反対集会があっても、辺野古の住民で参加するのは数人いるかどうか。滑走路ができると米兵が増員されるから、飲食店なども増え、ベトナム戦争の頃より活気を帯びるのは確実だ。我々は、米軍基地とともに育ち、生活してきたから、普天間飛行場が移ってきてもまったく違和感はない」
辺野古住民は移設に賛成しているんです – 沖縄 より引用

今般、名護市市長選挙(平成30年2月4日投票)が実施されます。辺野古沖基地建設反対派の現市長と賛成派の新人候補との対決です。『激戦』と予想され、賛成派が53%というデータも。そうである以上、賛成派の住民が現実に多く存在する証左でもありましょう。

いずれにしろ、今般の名護市市長選挙は、長きにわたる基地移設問題に対して、真実、『当地住民の方々の意見』が反映される重要な選挙と言えるのではないでしょうか。