この記事では、市議会議員選挙における投票日や告示日の決まり方、選挙にかかる費用や拠出すべき供託金(きょうたくきん)について、また、市議選に立候補する為の条件やそのための準備、並びに投開票速報と選挙結果の状況について、わかりやすく解説しています。
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目次
市議会議員選挙の告示日(選挙日程)について
公示日または告示日は、投票日(選挙期日)が正式に決定・発表される日です。
さて、公示と告示の違いは何でしょう?
衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙のについては、これは『天皇の国事行為』として行われるので『公示(こうじ)』と呼ばれます。これに対して、その他の選挙(衆議院・参議院の補欠選挙を含む)は、その選挙を実施する各選挙管理委員会が行うために『告示(こくじ)』と呼ばれます。
ちなみに、特例市以外の市議会議員選挙における告示日は、『投票日(選挙期日)前少なくとも7日前まで』となっています。
しかし、公示も告示も、投票日が決まらなければ定まりません。
市議会議員選挙の日程は選挙期日がまず決まり告示日が訪れる
選挙の投票日当日(開票も即日が基本)のことを、『選挙期日(せんきょきじつ)』といいます。任期満了や市議会の解散・欠員などにより選挙が必要になった場合、まずこの選挙期日が決定されます。
選挙期日は、公職選挙法によって、議会や行政に極力空白をつくらぬよう、一定の期間内に設定することが定められています。
市町村議会議員の選挙における選挙期日は選挙を行う事由(理由)により、以下のとおりとなっています。
- 任期満了の場合:任期満了日前30日以内
- 議会解散の場合:解散の日から40日以内
- 死去・辞任等その他の場合:事由発生の日から50日以内
以上によって定められた選挙期日に従い、告示(公示)日には立候補者の届け出受付が行われます。そして、議席定員を超える届け出があった場合に、投票・開票が行われることになります。
市議会議員選挙の費用|選挙活動にかかるお金について
市議会議員選挙に限らずとも、選挙に立候補して当選を果たすためには、お金がかかります。選挙のポスター代・チラシ代・はがき代、選挙事務所にかかわる各種費用やスタッフ代金等々、その多い少ないの差こそあれ、何がしかの出費は避けられません。
これら選挙にかかわる種々の出費の中には、地方公共団体(市など)が『公費負担』と称して、負担してくれる範囲のものがあるほか、選挙に出馬する場合に必ず一旦預けなければならない『供託金』というものがあります。
以下に、【選挙にかかるであろうお金】について列記してみます。
- 選挙事務所・演説会会場などの賃借料(家屋費)
- ウグイス嬢への報酬・事務所での応接・選挙ハガキの宛名書き等の報酬(人件費)
- 切手代・電話代など(通信費)
- 選挙運動中に利用のタクシー代・バス代など(交通費)
- 選挙用ポスター・選挙用ハガキの印刷代(印刷費)
- 選挙事務所等での看板・候補者のタスキ代金など(広告費)
- ボールペン・ノートなど事務用品代金(文具費)
- 選挙運動スタッフに出す弁当代・茶菓子代など(食料費)
- 選挙運動スタッフの休息及び宿泊にかかった費用(休泊費)
- ガムテープ・電気代・ガス代・水道代、選挙に使用する白手袋など(雑費)
- 供託金(きょうたくきん):出馬の際に法務局に預けなければならないお金
選挙運動費の公費負担について
選挙費用(選挙運動費と称し、告示日から選挙期日の前日までにかかった費用)の内、選挙用ポスター代金や選挙はがきの送料など、一定の条件の下で、市が負担する『公費負担』の対象となります(市が負担してくれる)。
その詳細は、地方公共団体によって定めがありますが、一例として『埼玉県飯能市』が公費負担の対象とするものを以下に列記してみます。また、一定の条件については、各地方公共団体の打ち出しを確認して下さい。
選挙運動用自動車費用
選挙運動用ポスター作成費用
選挙運動用ビラ作成費用
選挙運動用通常はがきの交付(郵便料金)
ポスター掲示場の設置
選挙公報の発行
演説会の公営施設利用
選挙運動費の『公費負担』は候補者間の選挙運動の機会均等を図ることを目的にした制度です。しかし、投開票の結果、得票数が一定数未満の場合で後述する『供託金没収』の対象となった場合、公費負担も取り消されてしまうので注意が必要です。
市議会議員選挙における供託金(きょうたくきん)について
出馬(市議選への立候補)には選挙資金の他に『供託金(きょうたくきん)』の拠出も必要です。
供託金とは、出馬の際に法務局に預けなければならない金額です。預けるということは、基本的に後ほど戻って来るということです。市議会議員選挙の場合、その金額は以下のとおりです。
政令指定市:50万円
それ以外の市:30万円
供託金の没収(供託金没収点)
市議会議員選挙の投開票の結果、得票数が一定数以上であれば、供託金(きょうたくきん)は選挙後に戻って来るものですが、一定数未満の場合は没収されてしまいます。
選挙で当選するためには、議会の定数以内に入っているだけでなく、一定数以上の得票数が必要です。これを公職選挙法では「法定得票数」といいます。
また、これとは別に「供託金没収点」というものも存在し、一定数以上の得票数を得られなかった候補者は供託金が没収されてしまいます。これは、立候補者の乱立を防ぐための制度です(供託金没収点は選挙の種類によって異る)。
市議会議員選挙の場合の「供託金没収点」は以下の式で算出されます。
有効投票総数÷議員定数÷10
以下、実例にて確認してみましょう。
茨城県 高萩市(たかはぎし)
高萩市議会議員選挙(2019年11月10日投票)
告示日:2019年11月3日
投票日:2019年11月10日
定数 / 候補者数:14 / 18
執行理由:任期満了
有権者数:24,358人
投票率:58.51%
no | 結果 | 得票数 | 氏名 | 年齢 | 性別 | 党派 | 新旧 |
1 | 当 | 1068 | 大足 光司 | 51 | 男 | 国民 | 現 |
おおあし こうじ | |||||||
2 | 当 | 1042 | 今川 敏宏 | 57 | 男 | 公明 | 現 |
いまがわ としひろ | |||||||
3 | 当 | 1017 | 菊地 正芳 | 58 | 男 | 公明 | 現 |
きくち まさよし | |||||||
4 | 当 | 1009 | 大森 要二 | 60 | 男 | 無所属 | 現 |
おおもり ようじ | |||||||
5 | 当 | 990 | 田所 和雄 | 68 | 男 | 無所属 | 現 |
たどころ かずお | |||||||
6 | 当 | 923 | 我妻 康伸 | 51 | 男 | 無所属 | 現 |
わがつま やすのぶ | |||||||
7 | 当 | 922 | 吉川 道隆 | 52 | 男 | 無所属 | 現 |
よしかわ どうりゅう | |||||||
8 | 当 | 886 | 坪和 久男 | 65 | 男 | 無所属 | 現 |
つぼわ ひさお | |||||||
9 | 当 | 779 | 八木 陽子 | 68 | 女 | 無所属 | 現 |
やぎ ようこ | |||||||
10 | 当 | 776 | 平 正三 | 75 | 男 | 共産 | 現 |
たいら しょうぞう | |||||||
11 | 当 | 723 | 寺岡 七郎 | 77 | 男 | 無所属 | 現 |
てらおか しちろう | |||||||
12 | 当 | 722 | 飯田 毅昭 | 58 | 男 | 無所属 | 現 |
いいだ たけあき | |||||||
13 | 当 | 639 | 渡辺 悦夫 | 67 | 男 | 無所属 | 現 |
わたなべ えつお | |||||||
14 | 当 | 626 | 岩倉 幹良 | 78 | 男 | 無所属 | 元 |
いわくら みきろう | |||||||
15 | 620 | 根本 茂 | 61 | 男 | 無所属 | 現 | |
ねもと しげる | |||||||
16 | 615 | 畠山 結樹 | 28 | 男 | 無所属 | 新 | |
はたけやま ゆうき | |||||||
17 | 413 | 森田 省一 | 69 | 男 | 無所属 | 新 | |
もりた しょういち | |||||||
18 | 343 | 鈴木 一央 | 68 | 男 | 無所属 | 元 | |
すずき いちひろ |
有効投票総数(得票数総計):1,008
除算する議員定数:14
除算する数値「10」:10
1008÷14÷10:101
以上により、落選者を含め、立候補者18名全員が供託金没収点をクリア。
最下位は343表 > 101(供託金没収点)。
全員に供託金が戻ることとなります。
市議会議員選挙への立候補と準備について
市議会議員や市長(首長)になるために立候補するには、当人が一定の条件を備えている必要があります。立候補への準備段階として、その条件を確認します。
立候補の為には、選挙権における「投票できる権利」以外に、「立候補の自由」及び「公職に就くことを許される資格」が必要になってきます。
それは、以下のとおりです。
条件①:選挙に立候補する権利(つまり被選挙権)があること
市議会議員・区議会議員の被選挙権(選ばれる権利)としては、日本の国民で満25歳以上であること及びその市区議会議員の選挙権を持っていることが求められます。
条件②:法務局に供託金を預けることが出来ること
前述していますが、「供託金」とは、立候補者に法律で決められた金額のお金を法務局に預けさせ、当選を争う意志のない人などの無責任な立候補者を防ごうという制度です。
選挙に応じた金額の供託金を預けられない人は立候補できません。
市議会議員選挙の立候補予定者説明会への参加
選挙に立候補できる要件と供託金を預けられることが確認出来たら、立候補予定者説明会への参加を経て、選挙への参入と投開票の結果へと進んで行けます。
定められた選挙期日の下、その1ヶ月から2ヶ月前に、各選挙管理委員会によって、「立候補予定者説明会」の開催日程と当該選挙の主要日程が発表されます。
これを受けて、立候補する者は必ず、立候補予定者説明会に参加して説明を受けると共に、立候補届出に関する書類等を受け取ります。
そして、いよいよ、告示日のたった1日間に、必要書類(届出書類)を完備して、立候補届出に臨むことになります。
※ 実質的には、ほとんどの選挙管理委員会において、事前に必要な書類を審査し、不備の有無等をチェックするための「事前審査」を行っています。
立候補届出が済むと、いよいよ、投票日の前日までの選挙戦がスタートします。
市議会議員選挙の速報について
市議会の議席定数を越える立候補者数があった場合、市議会議員選挙では投票・開票を行って、定数内の順位を決めて、当選者が明らかにされます。
通常、投票の開票は即日に行われ、当日深夜中には当選結果が判明します。
投票に参じた有権者にとって、当選結果は一刻も早く知りたい情報です。その結果及び、結果が出る以前の投票状況や開票経過状況が『速報(そくほう)』として発表・公表されます。
市議会議員選挙の開票速報や開票結果については、当該選挙管理委員会が業務を執行する立場にありますが、その発表や公表については、市選挙管理委員会のホームページ公表がマスコミ各社の公表より遅れるケースもあり、有権者はそれらマスコミの発表を第一に期待するケースが見られます。